ダイニングバーで働くあたしは仕事中も上の空で、「住む場所を早く見つけなきゃ」とずっと考えていた。
衣食住、どれか欠けてしまうと生活なんてできなくなる。
住む場所をすぐに見つけるお金が、21歳でフリーターをやってるあたしにあるわけもなく……。
だからと言って、身勝手な決断をした美佳とは早く縁を切りたいし、「お金が貯まるまで置いてほしい」と頼むのは死んでも嫌だ。
バイトを終えて私服に着替えたあたしは、ロッカーの前で携帯電話を持ち、アドレス帳から助けてくれそうな友人を探していた。
「あ」から「わ」まで眺めていくあたしは、一度、「た」の欄で指の動きを止めてしまった。
だけど、彼には頼りたくないという気持ちのほうが大きく、あたしは「他に誰かいないかな」とその名前を無視していく。



