「……寒っ」
体を冷やす隙間風から逃れようと、カーテンを開けた窓から離れる。
毎年、正月が来る度、あの日のことを思い出すんだ。
そんなに意識はしてないんだけど、あの日の陽平の笑顔は、多分、自分の中で印象的なものになっているのかもしれない。
部屋にある小さなテーブルの上に、鞄から出した鏡を置く。
「さぁ、雑煮でも作ろっかな」
両手で髪の毛をまとめて、頭のてっぺんで結う。
水玉のぼんぼりがついた、お気に入りの赤いゴム。
千草には不評だったけど、陽平は「花らしい」って言ってくれたから……、今日もつけてみる。



