「今、どこ?」
常盤には悪いけど、今から彼女のもとへ駆けつけようかなと思った。
多分、花のことだから、公園かどこかで泣いているのかもしれないし。
「……んちの前」
叫んでいたせいか、花の声はかすれていて、ちゃんと聞きとることができない。
「ん?」と聞き返すと、彼女は小さく咳払いをして、もう1度、同じ台詞を言う。
「陽平んちの前」
ポツリと囁かれた言葉。
まさか家にまで来ているとは思っていなかったから、聞いたときはビックリした。
けれど、「会ってから話を聞くのが一番だな」と思った俺は、平静な声で返す。
「待ってろ。すぐ帰るから」



