3LDKの城 ① 途中まで公開


「今、どこ?」

常盤には悪いけど、今から彼女のもとへ駆けつけようかなと思った。

多分、花のことだから、公園かどこかで泣いているのかもしれないし。

「……んちの前」

叫んでいたせいか、花の声はかすれていて、ちゃんと聞きとることができない。

「ん?」と聞き返すと、彼女は小さく咳払いをして、もう1度、同じ台詞を言う。

「陽平んちの前」

ポツリと囁かれた言葉。

まさか家にまで来ているとは思っていなかったから、聞いたときはビックリした。

けれど、「会ってから話を聞くのが一番だな」と思った俺は、平静な声で返す。

「待ってろ。すぐ帰るから」