「本当にごめんね」
そうつぶやく彼女は眠たさを理由にして、自分の部屋へ逃げていく。
パタンと閉められたドア。
あたしは呆然として、数秒後、ひざの上に落ちたご飯粒をつまんでため息をついた。
息と一緒にこぼれるのは、「またか」という失望感。
身勝手な彼女の発言には、もう怒る気力もわいてこない。
窓の向こうに広がるのは、見ただけで寒さがわかってしまうような白い空。
正月を待つ町並みは妙に静かで、行き場をなくしたあたしは、数日後の自分を想像して不安になっていく。
「エイジがね、来年から一緒に住もうよって言ってきたの」
美佳の相談はあまりにも突然すぎて、これは夢なのだろうかと思うくらいだった。



