「良かったな」と付け足すと、常盤は鼻歌を歌いながら「楽勝、楽勝!」と笑っている。

部長の言うとおり、俺たちは正反対なのかもしれない。

うちの会社の6割は新卒採用で入った人間で、後は俺のような中途採用の人間で成り立っている。

俺はもともと、この会社の取引先に勤めていた人間だ。

「辞めようかな」って悩んでいるときにさっきの部長と出会い、「うちで働いてみないか」と声をかけられた。

常盤は飲み屋で働いていたらしいが、客として店にきた部長に気に入られ、この会社に呼ばれたと聞いた。

俺たちは取引先に商品の説明をして、契約に結びつけることを仕事にしている。

いわゆる営業だ。

前の会社でも良い成績を残していた俺は、この会社でも部長たち上司に期待されている。

俺が入るまでトップの座にいた常盤とは、毎月、成績の頂点を争う仲だ。