話すより見せる方が早いと思った俺は、すでに鞄から出していた書類を渡し、にっこり微笑む。

「既定の金額内でいけそうです」

部長に見せたのは、どの営業マンも諦めて帰ってきていた会社との契約書。

「結構です」の1点張りで相手にしてくれなかった会社に、1ヶ月ほど通いつめていた俺は、この前、やっと担当者に説明することができて、今朝、無事に契約が成立した。

「……よし、よくやった」

書類を端から端まで鋭い目で確認していた部長は、満足げな笑顔でうなづいた。

「あそこはもう諦めた方がいい」と忠告してくれていた同僚たちも、自分のことのように喜んでくれた。