高層ビルが立ち並ぶオフィス街。
頬に当たる風も冷たく、擦れ違う人々は皆スーツ姿でどこか急ぎ足だ。
鏡のような窓を使っている13階建のビルに、駆け込むように入っていく。
受付の女の子たちやエレベーターで一緒になった同僚とも、挨拶程度の会話しか交わさない。
混み合ったエレベーターの中では、ひっそりとスーツの袖をずらして、去年の末に奮発して買った腕時計に目を向ける。
時間通りに帰れたことにホッとした俺は、持っている鞄の中から書類を出しながら会社へ戻った。
「田島、どうだった?」
俺が帰ってきたことに気がついた部長は、奥のデスクに腰かけたまま声をかけてくる。