ゆっくり目を閉じるあたしは、込み上げてくる怒りを抑えようと、数回、深呼吸をした。

昨夜は実家にいたときと同じような気持ちになり、今のあたしはものすごく気分が悪い。

「……片付けてから出て行けよ」

テーブルを軽く蹴ると、空になったお菓子の袋が下に落ちていく。

それを拾うこともせず、あたしは寝室に置いてある携帯電話を取りにいった。

そして、震える手に力を入れて、1つのアドレスを画面に出していく。

あんな思いはもうしたくない。

頭の中に浮かぶのは、優しく片手を差し出してくれていた頃の陽平の姿。

耳に鳴り響く音が、緊張と不安を与えてくる。

頼りたくないけれど、あたしにはやっぱり彼しかいない。