3LDKの城 ① 途中まで公開


肩を並べるあたしたちは、まっすぐ前を向いたまま、静かに手だけを動かしていた。

鏡越しにチラッと千草の顔を見たけれど、彼はぼんやり自分の顔を眺めて、黙々と口の中を磨いている。

目を逸らしたあたしは、自分の鼻先を見下ろしながら、歯ブラシを持つ手を変えた。


「……陽平は?」

なんとなく千草に見られている気がしたあたしは、ぎこちない空気に耐えられず、この場にいない彼のことを問いかけた。

「あぁ、さっき会社に行った。やらなきゃだめなことがあるらしいから、今日は早めに出るってさ」

腰を曲げて、口の中の泡を洗面台に吐き出した彼は、そのまま水を含んだ。