3LDKの城 ① 途中まで公開


奥の部屋に目を向ける。

ガラスの扉の向こうは電気がついていて、中からクスクス笑う美佳の声が聞こえてきた。

イラッとしたあたしは、足でそのスニーカーを端によけながら、足音を聞かせるように家の中をドンドン歩く。

「あっ、おかえり」

慌てて扉を開けた美佳は、まばたきを何度もしながら声をかけてくる。

「ただいま」と素っ気なく返事をし、あたしは部屋の中にいる男をジロリと見た。

こいつが「エイジ」か。

美佳と並んで映っているプリクラで顔は知っていたが、実際に会うのは初めてだった。

煙草を片手にテレビを眺めるエイジは、あたしに挨拶すらしてこない。