奥の部屋に目を向ける。
ガラスの扉の向こうは電気がついていて、中からクスクス笑う美佳の声が聞こえてきた。
イラッとしたあたしは、足でそのスニーカーを端によけながら、足音を聞かせるように家の中をドンドン歩く。
「あっ、おかえり」
慌てて扉を開けた美佳は、まばたきを何度もしながら声をかけてくる。
「ただいま」と素っ気なく返事をし、あたしは部屋の中にいる男をジロリと見た。
こいつが「エイジ」か。
美佳と並んで映っているプリクラで顔は知っていたが、実際に会うのは初めてだった。
煙草を片手にテレビを眺めるエイジは、あたしに挨拶すらしてこない。



