「仕方ないなぁ」と言いながら、子供をあやす母親のような態度で、彼女は自分の部屋に荷物を置きに行った。

「楽しかった?」

花の後ろ姿をぼんやり見つめていると、常盤が話しかけてきた。

下駄箱に手を置いて、にっこり微笑まれる。

何もバレてないと思っているから、こんな態度ができるのだろう。

「……花に手を出すな」

眉間にしわを寄せて、目の前のヘラヘラした顔をきつく睨む。

常盤の浮ついた行動には、本気で怒っていた。

だけど、俺はこの視線の中に、自分への嫌悪も交えていたと思う。