3LDKの城 ① 途中まで公開

終電に間に合ったあたしは、電車の中である決意をする。

「突然、出て行ってって言う方も悪いんだから、喧嘩してでも言い分は通してやる」

マンションに帰ってきたあたしは、今から開けるドアの前に立ち、手にかけたドアノブを睨みながらブツブツつぶやいていた。

美佳と一緒に住むことになったのは、彼女の失恋がきっかけだった。

前も同棲をしていた彼女は、彼氏と別れたとき、毎晩のように酒を持ってなぐさめにきていたあたしに「1人が寂しい」とすがってきた。

そんな彼女を見て「可哀想だな」と思ったし、まともに食事もとらないことも心配だったあたしは、住んでいた1Kの部屋を解約して、この2DKの部屋に荷物を持ってきた。

家賃も半分出していたし、女同士の生活はそれなりに楽しかった。