泣きわめいて頼めば、お人好しの彼ならきっと居候させてくれるだろう。
だけど、気が進まない。
陽平とはもう元に戻っているし、今はギクシャクせずに仲良くできる。
だけど、極力、彼には近づきたくないという気持ちが、あたしの中にあるのは確か。
それに、その家に住ませてもらうということは、「彼が嫁や子供と一緒に住んでいた場所で生活する」ということになる。
「……あ、電車なくなる」
携帯の画面にある時計を見たあたしは、終電を気にして、急いで店を出た。
「陽平に頼む」という手段を、考えないようにしながら……。



