電車を降りてスタスタ歩く棗





「……………」


「……………」









もちろん二人の間には何の会話もなく

ただただ棗の後ろにくっついているだけだった






でも、ひとつだけ疑問





「ねぇ………」




「あ?」





「棗って……あたしの家知ってるの?」





「………………知らね」








ほら。知らないってw



何を根拠にそっちに進んでたのさ笑







まぁ合ってるからいいけど




「そこを右に曲がってまた右」





そんなこんなで今度は私が前にたって歩き始めた














「あ、ここ」




十数分後



いつの間にか見慣れた(まだ1ヶ月しかたってないけど)ドアの前にいた








「ここが………お前ん家?」



「うん」







私の家をしばらく見たあとに

棗は中に入っていく





………中に………入っていく?!




「えっ、ちょ。棗?!」





信じられない行動にパニックなのは私だけ?!







「なにしてっ」



「あら、お客さん?」




………!!



最悪だ、お母さん帰ってきてるなんて!






「こんばんわ、黒羽棗です」



「こんばんわ!イケメンね~」




あ、イケメン好きのお母さん食いついたな…






「菜穂、どちら様なの?」



「えっ?あ、んー……」




どちら様なの?って……

友達?__ってゆーか知り合い?


じゃぁなんでここにいるの?って感じだよね



送り迎えとかは……こー、もっと




恋人とか?






恋人………カレシ………







「……っ……か、彼氏とかじゃないから!」




「友達です」






焦って答える私とは反対に

冷静に平然と答える棗





友達なのですか( ̄▽ ̄)





何か………胸のあたりがチクッとしたような。










「そうよね、菜穂には拓人くんがいるからね!てっきり浮気してるかと思ったわぁもう!」





…………げっ





「拓人………?」


やばい、棗も不審に思ってるっ






「く、黒羽くん!今日は”ケガした”私を送ってくれてありがと!もう大丈夫だから!」




さ、帰って帰って!とでも言うように

手でジェスチャーする私



でも



「………お母さんに言うことがある」



それだけ言ってお母さんの前まで行く





「…………え?」






『明日覚えとけよ?』

『感謝してんならパシリ追加3な?』




てっきりそんなことを言うかと思ったのに

出てきた言葉に唖然とする私





「申し訳ありません。私事で菜穂さんを巻き込んでしまい、軽いとはいえ怖い思いをさせてしまいました。きちんと報告しておきたくて今日は送らせていただきました。以後気をつけます。すみませんでした」





そう言って深々と頭を下げる棗



…………棗………だよね?






「あら、いいのよ?何があったかは分からないけど、この子は田舎っ子の強い子だから、心配してないわ。わざわざありがとうね」





「大事な娘さんに怪我をさせるわけにはいけません。では、失礼します」







棗はそう言うと玄関を出て来た道を戻っていく









「あの子……すっごく礼儀正しい子ね!それにイケメンだし♪お母さん、気に入ったわぁ☆」





いつもと違う棗に戸惑っていた私だったけど

今なら確信を持って言える





ただのそこら辺の自意識過剰の顔だけの奴らとは違うし

非常事態を他人のせいにしない

ちょっと……いや。かなりSでいつもからかわれてるけど







誰よりも真面目で素直で誠実な人なのは分かった










『…………………猿だな』







多分___________