階段を降りて玄関に向かう途中。
「おい」
呼び止める声がして、不意に振り返った。
振り返ってしまった。
私の目の前には、昨日私が貸したどこから見ても女の子の傘にしか見えない可愛い傘を持つ夏樹くんの姿で。
凄く動揺した。
「わ、私?」
周りに誰もいないのに思わず確認してしまうのは仕方ないと思う。
「ちょっと来い」
「え…」
「早く」
夏樹くんは何故か余裕が無さそうに急かした。
動かない私にイラついたのか、思わず私の腕を引こうとして。
ビクついた私の身体を見て動きを止めた。
決して嫌だったわけじゃない。
急に触れられそうになったから驚いただけで…むしろ……。
「ち、違…」
否定しようとして出た言葉はそれ以上出なかった。
夏樹くんがあまりにも悲しそうで、傷ついた顔をしてたから。
そうさせたのが私だと思うと何も言えなくなってしまったのだ。
