だけど私は死ぬことが怖くてみんなを助けることができない。

人間なんて誰しも自分が一番かわいいものだ、しょうがない。

だからできるだけみんなに近寄らないようにしないと、せめて私の覚悟が決まるまでは。

私はそう思いながらその場をたった。

すると彼女はすっと私の手を強く掴んで言った。

「なんで? なんでそんなこと言うの?」

とても悲しい声だった。

顔を見たら声と同じように悲しそうな顔をしていた。

彼女はそのまま私に話をしだした。

自分のこと、自分の気持ちを。

「私ね、一ヶ月後にお姉ちゃんになるんだ。だから、これは絶対に生き残りたいの。でも一人じゃ無理なんじゃないかなって、だって『鬼』は自分から望んでその道を選んだんでしょ。一筋縄では行かないじゃない」

そこで彼女は一息をついた。

そしてまっすぐ私の目を見つめてきっぱりと言った。


「ねぇ、力をかして」


最初のおどおどしていた美穂とは少し違う気がした。