「えっ?いいよ。いらない。矢口だって使うでしょ??」



「俺は別に濡れてもいいし、返すのはいつでもいいから」



矢口潤が一人でここにいるってことは、



今日は実夕と一緒に帰らないってことだよね。



それだけでなんだかホッとするあたし。



すると、矢口潤はあたしの手首をスッと持ち、



その傘をあたしの前に差し出し、



「はい、どうぞ!」



と、持っていた傘をあたしに持たせ、ニコっと微笑んだ。



「悪いからいいって……」



受け取った傘を矢口潤へ返そうとするあたしを見ながら矢口潤が言った。



「やっぱ…下田が言ってたこと、嘘だったんだな…。大塚、一人で帰ってんじゃん」



嘘??この前の実夕の言っていたことを言ってるのかな……。



実夕が矢口潤と一緒に帰りたかったからついた嘘。