少し多めに時間を見て、16時40分までに連絡が無ければ、まずはリクとユウカに電話しよう。
電話に出ない場合は部屋に突入するしかない。
片手はポケットの中に忍ばせておいたナイフを握り締めている。
その手は汗でぎとぎとになり、無意識のうちに膝で貧乏ゆすりをしていた。
作戦通りに進んだならば、エスペラントからはユウカが一人で出てくるはず。
そうだ、刃物男が出てきた時点で作戦は失敗したってことだ。
苛立ちのせいか時間が進むのが遅い。
携帯電話の着信音が鳴る事も無ければ、メッセージが入ることもない。
時刻は16時30分。
エスペラントから出てきたのは、別の中年のカップルだった。
スーツを着た50代の男と、生命保険のセールスレディのような女で、二人とも年齢相応の体つきをしている。
「嫌だわ。あの子。なんか私を見てる」
「うめ子さんは美人だから。もうしょうがないなあ」
俺は舌打ちをして、時計に視線を戻した。
