ここからラブホテルまで走っても3分はかかる。
交番はラブホテルとは真逆の方向にあるため、そこからだと走っても5分以上はかかるだろう。
警官に頼ることはやめよう。
俺はポケットに忍ばせておいた“ある物”を握り締めた。
ホームセンターで購入した折り畳み式のナイフ。
本来は、俺が取引をする役目だったから、いざという時の為に脅しで使用するつもりだったけど……。
刃物男の顔は俺も覚えている。
もし、刃物男が一人でラブホテルから出てきた時はこのナイフを使って実力行使でリクとユウカの安否を問うしかない。
30分以上経っても連絡がない場合は、部屋に突入しよう。
こういう時の場合に備えて、部屋の鍵は閉めない事になっている。
口の中が渇き、異常なまでのストレスが体全体に広がっていた。
いや、大丈夫。信じるんだ。
きっと取引を上手く終わらせて、リクとユウカは一緒に部屋から出てくるだろう。
ユウカのおやじさんの人間カードを手に持って。
そしたら、俺の家に行っておやじさんを人間カードから解放してやるんだ。
エスペラントの前に到着した。
時刻は16時20分ちょうど。
人通りの少ないラブホテル街。
俺は電信柱に寄りかかりながら、辺りをキョロキョロ見回した。
