エレベーターを降りると三人の歩く足音が聞こえ、すぐに止まった。
スイートルームの前に到着したんだろう。
『ここっすね』
リクの自然な演技と共に、鍵を開ける音が聞こえてくる。
扉が開く音、部屋の中に入る音。
靴を脱ぐ音、床を踏む音。
今は、あらゆる音が全ての情報源だ。
三人は中に進み、おそらく廊下を歩いてリビングに移動しているところだろう。
廊下を抜ければ、ただ広い20畳ほどはあるリビングがある。
ヨーロッパをイメージして作られたような高級感ある内装と、大型のテレビ、キングサイズのベッド、マッサージチェアーに、清潔感のある大きな絨毯が敷かれている。
その絨毯の上には、膝ほどの高さの小さな細長い木の机と、向かい合うように二つのソファが設置されている。
そこが交渉となる場所だ。
『こちらで話しましょう』
リクがそう言いながらソファに腰かけたようだった。
『そちらへどうぞ』
刃物男に向かい側に座るように勧める。
リクは予定通り、ここである言葉を口にした。
『おい。お前はもう帰っていいぞ』
ユウカに対して、ここで帰れとの指示。
いいぞ。一緒に来た女性に対しては少しぐらい上から目線の口調の方がいい。
『はい……』
ユウカの消え入りそうな小さな声。
ここまで全て上手くいっている。
