『それは助かります。いいんですか? こちら側は20代の女性をいただく立場なのに』
人間は本当に隠したいことがあると、どんな事でも慎重になる。
人間カードの存在が明るみになれば自分の立場が危うくなる事を理解しながらも、刃物男は落ち着いた声でそんな言葉を口にした。
この言葉ならまずバレないって事を理解して喋っているんだ。
さらに、ユウカの反応を窺っている可能性もある。
この女性はどれだけ関わっているのだろうと。
やはり、少なからず刃物男の経験値は高い。
『もちろんです。その代わり、女性の顔には期待しないでくださいね』
街の喧騒に紛れて聞こえてくるリクの声。
俺は感心しながら、リクの顔を思い浮かべた。
20代女性と中年男性の取引を理解した上での発言。
向こうに警戒心を抱かれることなく自然と受け入れられる言葉だ。
『いえいえ、こちら側は女性に需要があるので本当に助かります』
『俺らも男性の方が需要は高いんですよ』
時計を見ると、16時ちょうどを針が示していた。
歩き始めてから3分ほどか……。
ここまでユウカは一言も話していない。
それでいい。
