すぐに、スマホにはリクから電話がかかってきて通話状態にし、イヤホンを接続して耳に取り付けた。
窓の向こうには、リクとユウカの姿が現れる。
二人はそのまま真っ直ぐ刃物男のそばまで足を進めていく。
リクの被った赤い帽子。ユウカの着た白いニットのセーター。
二人の目印に気が付いた刃物男は、視線を向けて軽く会釈をした。
やはり普通のサラリーマンと同じような印象だ。
こんな人間が、人間の売買をやっているとは思えない。
顔を上げると、さらに印象の良い笑顔を浮かべて二人と会話を始めた。
『はじめまして。リックです』
リクの声だ。
偽名を使えとは言ったが、随分とわかりやすい名前だな。
ユウカがぺこりと小さく頭を下げると、今度は刃物男が口を開いた。
『こんにちは。刃物男です』
落ち着いた低い声がイヤホンから聞こえてくる。
胸の鼓動がドクッと大きく波を打った。
アイツが刃物男で間違いない。
そう確信を持つと、初めて全身が本物の緊張感で支配された。
