人間カード



「でも、食事はあげるよ。最低限のね。“あの時”に良い仕事をしてもらわないといけないから」


あたしはノゾミの言葉にゾッとした。


これはゲームじゃない。


どうしてか?


答えは簡単だよ。


ゲームのコンピューターじゃなくて、本物の人間に話しかけてるからだ。


ありえない。


あたしは茫然として、その様子を眺めていた。


「じゃあ、またねー」


それからノゾミは、男と何回か会話をした後、平然とした様子で牢屋から出てきた。


そんなノゾミの姿を見て、あたしは息を飲んだ。


ノゾミは、あたしの目を真っ直ぐ見て笑顔で言った。


「どう信じてくれたかな?」


あたしは声で答えることなく、首を縦に振る。


芸能界でも衝撃的な事は多いけど、あたしは人生で一番衝撃を受けていた。


人の知らない世界。


正確には、多くの人間が知らない世界。


この世界からは、危険な臭いがぷんぷんする。


ノゾミは「戻ろう」と言った。