全く心当たりもなく、聞いたこともない名前だった。
刃物男の目を見る限りでは、冗談やカマをかけてきている雰囲気じゃない。
真剣に質問をしてきている。
「知っているだろ? 美木堂レンを……」
「知らない」
思わず本当の事を口にした。
これは刃物男の作戦なのか?
そう言えば、戦争で捕虜を捕まえて尋問をする時に、全く知らない質問をあえてすることにより、相手に口を開かせることで他の事も引き出していくみたいな心理テクニックを聞いたことがある……。
そういう手口なのか?
でも、そういう素振りは一切ない。
何故なら、もう一度知らないと言えば、おそらく殴られるからだ。
「もし、君が美木堂レンを知っていて、その事を我々に話せば、君を無事に家に帰してあげよう」
刃物男は、わざとらしく折れた方の腕を持ってきながらいやらしい笑みを浮かべる。
「答えないなら、ユウカちゃんに訊いてもいい。随分と素直みたいだからね」
「や……やめろ! ユウカにだけは手を出すな!」
「それは君次第だよ。佐久間リクくん」
「本当に知らない! そんな奴は名前だって初めて聞いたんだ」
「ユウカちゃん、かわいいよねえ」
折れた部分を握り締められた俺は、牢獄内で絶叫した。
