父は一番近くのサービスエリアに滑り込んでいきましたが、しばらくの間はハンドルに手を置いたまま、その震えを止めることができませんでした。



父は駐車場で車を誘導している人に、たった今見た光景を話しました。すると、そのおじさんはタバコに火をつけながら、




「また、出ましたか……」


といいます。


あの赤い軽自動車は数年前、白い自動車に煽られて、ハンドルを誤って事故死した女性の車だったのです。同乗していた友達も即死で、捕まっていない犯人を捜して、今も高速道路をさまよっているのだそうです。