「ヒナ、大丈夫?」
「…うん。」
「女の子って変だよね。恋愛の話好きだから。色々妄想繰り広げちゃってさ。本当に嫌になっちゃう。」
「そうだよね。」
そのあと一緒に帰ったけれど、
ずっとヒナは元気がなかった。

冗談でも嫌だよね。
ヒナは、私にどれだけ狭山くんが好きか、語ってくれたことがある。
それから、私にいつか好きな人ができたら、ダブルデートしたいとも。
だから分かる。

私は、話を変えた。
良かった。少し笑ってくれた。


「ばいばい!」
「また明日ね。」

ヒナと別れた。



あの強い眼差し。
そう、なぜか懐かしく感じる。


…そうだ。
あの日の感覚と同じ。
あの人がキンセンカをくれた日。
麗らかな日差しと、名残惜しそうな一筋の冷たさ。
シノハラユウの瞳はまさしくそんな感じだ。

あれはまだ、7才の春になるかならないかくらいのときだった。

だから、どんな人がくれたのかは全然思い出せない。
大人か子供か、
1人だったか大人数だったか、
男か女か、も。
でもあの日を思い出すと、
いまでも胸がきゅうってなる。


…でも、しばらく忘れてたのに。
今更。