「じゃあユウくん、ヒナをお願いね。」
「あぁ、任せとけ。」


案の定、私は狭山くんに呼び出され屋上にいる。


「やっと来た、悪い子ちゃん。」
「あの…狭山くん。ごめんなさい。」
「…は?」
「私、あなたとは付き合わない。」
「何言ってんの、今更。」
「今更って…OKした覚えなんてないけど。…初めてでしょ、フラれたのなんて。」
「だめだ。行くぞ。」
「…少しは分かった?ロボットちゃんたちの気持ちが。」
「はぁ?そういうカコちゃんは分かるの?」
「今はわからないよ。私、17年も同じ人のこと思ってるから。でもね、10年前、知ったよ。自分の前から大切な人がいなくなる辛さ。」
「…」
「…狭山くんも知らないよね。本当に私のことが好きなわけじゃないもんね?」
「…知ってるよ。僕、カコちゃんだけは本気だから。」
「…」
「始業式に初めて会ったときから分かった。こいつ、僕と同類だなって。最初は、自分を鏡で見ているようで、すごく嫌だった。同属嫌悪ってやつかな。」

あれ。シミュレーションと違う。
昔語りさせるつもりなかったんだけど。

「でもね。篠原が転校してきたとき、篠原に向ける目だけは違ったんだ。あぁ、僕にもあんな風にできる大切な人が現れるのかなって。…そしてカコちゃんは、僕の夢になった。そしたら、いつの間にか君がその大切な人になってた。」
「…。」
「…だから、今分かった。ロボットの気持ちが。」
「な、泣いてるの?」
そっぽを向いた狭山くんは泣いてた。

「…ダサいな、僕。」
「…縛り付ける必要ないんじゃない?自分は悪い子だって。」
「…え?」

私は叫んだ。
「屈折し続ける人なんていないんだよね?ユウくん?」

…ユウくんが出てきた。
「それに、悪い子がいい子に恋して、いい子が悪い子を好きになって何が悪いのよ。」
構わず叫ぶ。
ユウくんの後ろから、ヒナが出てくる。泣いていた。
走ってヒナの元へ行く。
「ごめんね。嫌なもの見せて。」
「ううん。」

そう言って、私の横を通り過ぎていき、
狭山くんと私の中間地点に立つ。
「むしろ、狭山くんのことがよく分かった。もっと好きになった…!」
「ヒナ…」

「もう一度…もう一度。私と付き合ってください。」