玄関の前に着くと、ユウくんがいた。この構図…何回め?
「どこ行ってたの。具合悪いんじゃないの。」
「…家、入りたい。」
「…狭山と何話してたの?」
「っ!…見てたの?」
「あんなに道の真ん中で派手に話してたらみんな分かるわ。…まさか、狭山の〝他に好きな人がいる〟って、カコなの?」
「…」
「…おいおい。黙るなよ。冗談だろ。俺らは10年も前から、結婚を前提にお付き合いしてるんだから。」
「…狭山くん、どんなフリ方したの。〝他に好きな人がいる〟? なんでそこまで知ってるのよ。」
「相当派手にやってたなぁ、そう言われてみれば。全校生徒に見せびらかすような、ちょっと大袈裟だった…気もする。あ、でも、あいつに限って別に悪気ないだろ。人気者だって辛いんだよ。うんうん。」
「ひど…すぎる。」

私、悪魔に心を売っちゃうところだった。

「…信じてもらえないかもしれないけど、今から話聞いてもらえる?私の部屋、来て?」
「窓から?」
「…いいよ別に、今日ママいないから、玄関からで。」
「じゃ、遠慮なく。」



私は、今までのことを全部ユウくんに話した。


「だから、仲良い狭山くんを悪く言って申し訳ないんだけど…」
「カコは、悪い子じゃない。」

「え?」

「カコは、いい子。超いい子だもん。」
「…何それ。慰めてるの?」
「カコがあんまり心開かないのも、思ってること言えないのも、俺のせいでしょ?俺が、裏切ったから…」
「違うよ。私が弱かったからだよ。自分を守りたかったからだよ。」
「ちが…」
「でも、ヒナと会って、あとユウくんが帰ってきてくれたから、私強くなったよ。ヒナやユウくんは、確かにまっすぐだから。私に、居場所を示してくれた。」

「俺的にな、まっすぐとか屈折とか、違うと思うんだ。」
私をすっぽりと抱きしめながら言う。
「人間みんな、うねうねしながら進むんだよ。曲がっては戻り曲がっては戻り。完全にピンとまっすぐな人もいないし、屈折したままの人もいない。」
「随分とキザなこと言うんだね。」
「俺、こういうことばっか言って過ごしてきたから。ラブホリック改め、甘い囁き王子?的な?」
「ふふ。やっぱりユウくんはまっすぐだよ。そりゃあ、自分から見たら曲がって行っちゃってるなと思うこともあるんだろうけど、他の人から見れば、ユウくんはやっぱり、〝まっすぐ〟な人だよ。」
「…明日、学校行くの?」
「行くよ。」
「ロボット撲滅運動…?」
「ううん、悪魔撃退、じゃなくて悪魔を改心させる。」