変な夢を見た。

小さな私が、公園の真ん中で泣いている。

「行かないでよ。うわぁーん、うわぁーん。ユウくん…!」

…ユウくん?
私の手には…キンセンカ?

あまりに似ていて混同しているのかな、私。


目の前の景色はどこまでも暖かいのに、

「寒い、冷たいよ…ユウくん。」


…ここで目が覚める。





…って。

「ええええぇぇ!?」
「うるさい。…ふふ。窓閉めて寝ろって言ったじゃん。」
「…ユウくん。また、不法侵入?」

私は、ユウくんを無視して起き上がろうとするけど、できなかった。
ユウくんの腕が私を押さえつけているから。

「…セクハラでも訴え…」
「なんで、俺の名前呼んでたの?」
「え?」
「俺の夢みてたの?教えて?」

そう言って、顔を近づけてくる。


…さすがの私でも、もう分かった。
あの日キンセンカをくれたのは…

「ユウくん。」
「ん?」
「…嫌い。私、ユウくんが嫌い。だって私を置いてった、裏切った。」

あれから私ね。
人を好きになるの無意識にやめたんだ。
女の子も、男の子も。
大切になればなるほど、裏切られたら辛いから。

「…ごめん。」
「分かってるよ、分かってる。別にユウくん悪くないよね。」
「…でもごめん。」
「でも、あの頃の私には辛すぎた。」


必死に必死に記憶を押し込めて。
…そりゃあ、なかなか思い出せないはずだよね。

思い出したくないのは、押し花でもなんでもない、
私だったんだもん。

ユウくんが、抱きしめてくる。


でも、狭山くんの言う通り、
私は悪い子。

これで溶け切るほど私の心は柔らかくなかった。


「…やだ。離して。」

「え…」

「帰って…」


本当は、帰って欲しくないのに。
口だけが嘘つき。
思えば、私きっと、あなたに2回恋をしたんだ。

でもね。小さな頃の純粋な私は、戻ってこないかも。
…悪い子だから。