キンセンカ〜別れの悲しみ〜

とぼとぼ歩いていると、

「カコちゃん!」
「うぁっ!?…狭山くん。」
「どうしたの?」
「さ、狭山くんこそ。お仕事…じゃなかったっけ?」
「ふ。…僕、今仕事激減中だから。ま、アイドルなんて飽きられたら終わりだし。」

そんなこと言われても何て言えばいいのよ。

「じゃあ、ヒナに会いに行けば。」

最近ヒナ、心配しか言ってないんだよね。

うん、問い詰めるいいチャンスだ。正直、ヒナにあんな顔をさせる人は許さない。

「ヒナ?…あぁ。」
「付き合ってる…んだよね?ヒナ、寂しそうだよ。辛そうだよ。時間あるなら…っ!」
「それ以上言ったら…」

怖い顔…が、近い。
すごい形相で私の顔を覗き込んできた。

「僕、許さないよ。」
でもすぐにいつものアイドルスマイルに戻った。
顔は近づけたまま。

「どいて。」

あんたのこと嫌い。
ヒナを傷つける人は嫌い。
そういう気持ちを目に込めて言う。

「…カコちゃん、本当はいい子じゃないよね。むしろ悪い子でしょ。」

は…いきなりなんなの。

「そうそう、そういう顔。僕と似てる。本当は心汚いのに隠してる。…ほら、僕たちは容姿に恵まれてるから。許されてきたんでしょ。上手くやれてきたんでしょ。」
「…確かにいい子じゃないよ、隠してるつもりはないけど。ただ、あなたと一緒にはしないで。」
できるだけ優しく言った。
本当は数センチのところにいる整いすぎた顔を殴りたい気持ちだったけど、ヒナの手前それはできない。
「本当は、他の人間なんて物体にしか見えてないんだろ。…親友のヒナのことも。」
「いい加減に…」
「心配するフリ、やめたら。ヒナは、カコちゃんと違っていい子だよ。」
「知ってるよ。…だから、ヒナを傷つけるのだけはやめてね。」
「…いい子すぎるんだよ、ヒナは。僕さ、あんたが好きになった。あんたさぁ、人間見るときは無機質な顔してるのに、篠原見るときだけ違うよな。」
「…は。」
「篠原と話しているときだけは感情が見える。…でもなぁ、合わねぇよ、あいつは、あんたには。やめときな。篠原のやつ、いいやつだもん。」

さっきからなんなの。
人を、良いだの悪いだの。

「僕と変わらないくらいの容姿を持ってるけど、まっすぐだ。何日か話してみて思った。屈折してる僕らは近づいたらダメだ。」

嫉妬…してるの?

「何が言いたいの。」
「屈折してる同士、仲良くしようぜ。…あ、ちなみに僕は学校では王子様だから。」
「…アイドルって疲れるね。狭山くん、本気で哀れ。」
「…僕と付き合え。どうせ、彼氏いたこと無いんでしょ。いくつ断ってきたの?」
「…」
「僕らに告白してくる人、可哀想じゃん。絶対振られるんだもん。僕らが付き合えば、勘違い野郎もいなくなるよ。僕、カコちゃんなら彼女にしてあげる。…僕らが作り出してきたロボットたちを減らそうよ。」

正気の沙汰とは思えない。


でも。

〝篠原は、あんたには合わないよ。
篠原は、まっすぐだ。〟

胸がキリキリするのは、狭山くんに対するイライラだよね。