部屋に着くと、
スケジュール帳からキンセンカの押し花を取り出した。

「ずっと忘れてたのにな。」

何か、何か言ってよ。
…って、無理か。
押し花だもんね。

押し花って幸せなのかなぁ。

ふと、そんなことを思った。
形だけそのまま残されて。
潰されて本当は生きてなんかないのに。
呼吸だってできないし香りを発することもできないし。
言いたいこと何も言えないのに。

ふと裏を見ると、ママの字が書いてある。

「キンセンカ、かっこ、カレンデュラ、花言葉、慈愛、別れの悲しみ」

じあい…
わかれのかなしみ…


何で〝あの日〟を思い出しちゃうのかな。
訳も分からず心がきゅうってなるだけなのに。
…どうせ思い出すなら、全部思い出させてよ。



気づいたら、私はそのまま机の上につっぷして寝てた。

何か温かいものが背中に感じられた気がした。