今日も空を見る。

…やっぱり。
夕焼けは嫌い。
寂しい気持ちになるから。
胸がきゅうって、なるから。
でも見たくなるのはなんでかな。

日が沈んでゆく。
今日は、太陽のスピードが速く見える。
そうやって、
今日は終わっていくんだね。

あ。
星が出てきた。

「星、好きなの?」

誰かが呼びかけてくる声。
…ユウ…くん?

「好き…だよ。」
「今外をみたら、カコがいる気がした。カコに会える気がした。…毎晩見ているの?」
「そう、でもないよ。」

しばらく、無言で星を眺める。
…ユウくん、絵になるなぁ。

端正な横顔。ラフなTシャツからのびる引き締まった腕。月明かりが反射してキラキラしている目。

そして、漆黒の闇の中に光る星々。


「カコー?ご飯よー?」

「あ…お母さんに呼ばれちゃった。また明日…。」
「おう。…また明日。」



「ねぇ、ママ。」

今日は、仕事が休みだったママ。
久しぶりに一人の食事を免れる。

「なぁに?」
「この前お隣に引っ越してきた人、私のクラスの転校生だったんだね。」
「そうよぉ。知らなかったの?
…あんたもしかして、何も覚えてない?」
「何が?」
「…えー。喜んでると思ったのにな。まぁいいわ。それもそれで面白いし。」
「何それ。」
「まぁまぁ、仲良くしなさい。」
「はーい…って、男の子だよ?」
「それが?カコねぇ、いつまでも男の子と喋れなかったらだめよ。結婚できない痛い系女子になっちゃうわよ。」

はぁ。ママが男好きのイケメン好きの元小悪魔女子だってこと忘れてた。

「…。」
「毎日一緒に行ってくれるよう、頼んであげよっかー?」
「止めてください!」

もう。どっちが親なのよ。

今に始まったことではないけどね。
ママとはずっと友達みたいに過ごしてきてるし、他の親子よりはきっと楽でいい。

仕事も、何気にずっと同じ職場で続いているみたいだから
根は真面目なんだろうね。


「ふふ。カコ面白い。」

わ…
今の訂正。
娘をからかって楽しむ母親なんて見たことない。


「もう部屋に戻る!」
「はいはい。」



私、何を覚えてないのかな。
それはきっと、あのキンセンカに関わることだよね。


私に寂しさだけを残していった誰か。


部屋に戻ると、
久しぶりに宝物箱を取り出した。

「あった…」

あれから、
「こうすればいつまでも枯れないわよ。」
と言って、ママが押し花にしてくれたんだよね。

本なんて好きじゃないから、しおりって使わない。
だから、雑貨屋さんで一目惚れして買ったスケジュール帳に挟んだ。