「……彼って⁈」
「とぼけないで…成宮さんよ。彼は私のものよ」
鬼気迫る勢いで胸ぐらをつかまれるとボタンがはずれ胸がはだける。
「……なに、その痕」
そう…いくつも付いているキスマーク。
慌てて胸を隠した。
「……どんな手を使って彼に近づいたのよ」
「真斗とは……『あなたなんかが名前を呼ばないで』」
興奮している彼女に何を言っても無理だろう。
杉本さん、あなたと真斗はどんな関係なの?
私は、彼女の手を解きただ一言だけつぶやいた。
「彼は、…恋人と結婚するわ」
「……嘘よ。この一カ月、彼にそんな女なんていなかったわ。彼が会ってた女はあなただけしかいなかった」
「……」
「彼の彼女になるのは私なのよ」
杉本さんは、まるでストーカーでもしているかのようだ。
「事実だから…本人に確かめてみてください」
私は更衣室を出てドアを閉め帰路を急いだ。
自分で言っておいて虚しい。
彼には恋人がいる
私の知らないどこかに真斗の愛する彼女がいる。
今、こうしてる間に彼は彼女に会ってるかもしれない。
あの指で、唇で彼女に触れていると思うとせつなくて苦しくて涙が溢れてくる。



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