掴まれた右腕も腰も熱を持ち、私の体じゃないみたいにふわふわしている。
今、起きている出来事に頭の中がついていかない。
それは、田近さんも同じだったみたいで
…
「えっと…ふたりはどういう関係⁈」
「……俺の『お昼に話した人が彼なんです」』
真斗には、こんなカタチで知られたくないから慌てて言葉を遮る。
それに、真斗の口から
……飲み仲間って言われたら……きっと、田近さんは諦めてくれない。
田近さんの中で昼間の会話がリピートされてるのか……真斗を見つめたまま身動き1つしない。
「…………そうか」
納得したようにただ一言つぶやく。
「先輩…俺、失恋したみたいです。すみません…先に失礼します」
「あぁ…」
ブスッとしたまま返事をする真斗。
チラッと私を見た田近さんにかける言葉もなく後ろ姿を見送っていた。
「いつまで立ってるつもりだ」
真斗の声が耳に響く。
田近さんに申し訳なく思うも、耳に届く真斗の声に私の心はときめいている。
まだ、腰にある真斗の腕にも……
この腕は、田近さんへの牽制だと思いたい。
「ねぇ…この手は何?座れないんだけど…」
「……別に」
スッと離れてしまう腕に寂しさを感じる。



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