「…っ俺は、警戒しろって七彩に言ったんだからな。キスされても、…文句言うなよ。」
その瞬間、飛鳥の顔がはっきり見えた。
部屋が明るくなったとかじゃなくて、飛鳥の顔が、目の前にあるからだ。
だけど、
「…キス、するんじゃないの?」
まだ寸止めだ。
動いたら、唇と唇はくっつきそうな距離だけど、飛鳥は文句言うなよとか言ったくせに、キスしない。
「キスしたら、七彩にもう口聞いてもらえなそう。もう、遅いかもしれねぇけど」
「別に、そんなことしない」
「は…?」
「文句も言わないけど。」
私も飛鳥も馬鹿な気がする。
自惚れじゃなれば、飛鳥も私も、きっと同じだ。
「…七彩は、俺のことどう思ってんの。なんでそんなこと言うんだよ」
私の心臓は鳴りやまないし、ぶっこける余裕も全くない。
「…弱気だね、飛鳥のくせに」
「人生かかってんだよ、お前の気持ちに」
なにそれ。
人生って大げさすぎ。