「は、離してよ。」
「こんな細っこい白い足をして、男が誘惑されないとでも思ってんのか」
飛鳥がすごい剣幕で怒っている。
なんで怒ってるの。
誘惑とかしてないし、私なんかが誘惑なんてできるわけないのは、
ゴリラとか言ってる飛鳥が一番よくわかっているでしょう?
「つい見ちまうんだよ、長ズボンはいてこい」
み、見ちゃうって!!!
「変態!」
「男はみんな変態だから気をつけろって言ってやってんだよ」
そう言って飛鳥は私の頬をスーッと撫でて、ふっと私から離れた。
触られた頬が熱い。
さっきまで触れそうな近さだっただけに、飛鳥が離れると空気も何もかも軽く冷たく感じる。
飛鳥は、私を待たずに、階段を下りていった。
緊張感が解けたからか、私はストンっと足に力が抜けてしまう。
「ありえない……っ」
よく飛鳥がわからない。
ただ、ひとつわかるとしたら、
初めて会ったときのあの壁ドンとは、私の気持ちは何もかも違っていて。
抱き締められた時と同じで、
壁ドンされることも、キスしそうなキョリになることも、頬を撫でられることも。
嫌じゃないってことだ。