また、君に会いたい

「どういう意味?」

「俺……、君の事……、野中さんの事、好きなんだ。
ちゃんと話したのは今日が初めてだけど……、桜の木を見ている君の事がずっと気になっていた。今まで、相手の事を知らずに好きになるなんてなかったから、自分の気持ちになかなか気付かなかったけど……。

俺が……、その彼の事、忘れさせてやる」


野中さんの目を真っすぐ見て、俺の今の気持ちを伝える。


彼の事をまだ好きな彼女を受け入れて、“それでもいい”って思って側にいるんじゃなくて、今度は、今度こそは絶対に忘れさせてやる。

いや、忘れて俺だけを見て欲しい

そう思った。


黙って俺を見ていた野中さんは口を開く。


「まだ、あなたの事を知ったばかり。だから、今は、あなたと同じ気持ちじゃない」


一か八かだった俺。

野中さんの側にいて、彼の事を忘れさせる

そう思ってはいるけど……

今日、初めてちゃんと話をした俺達。

お互いの事、まだよく知らないから、そりゃ、いい返事が聞けるわけないよな。

俺は、野中さんの言葉をドキドキしながら聞いていた。