「パーティーの時、あまり食べてなかっただろ」

確かに緊張しててあまり、食べてない。

「食べないと身体に悪い」

「じゃ、遠慮なくいただきます」

軽食はおにぎりだったけどとても美味しかったし、味のバリエーションが豊富だった。

「美味しかったぁ、ごちそうさまでした。綾斗さん、ありがとうございます」

「どうした。お礼なんか言って」

「綾斗さんが頼んでくれなかったら、軽食が運ばれてくることもなかったので」

「妻の身体を気遣うのは当然のことだろ」

妻という言葉に少し暗くなる。やっぱり、妻なんだ。独身じゃなくなるのはいいけど夫が六人もいるっていうのは…。

「ふわぁ…眠いな」

ドレスも脱がず、そのままベッドに横たわる。

「…無防備なやつめ」

「え」

綾斗さんが上から覆い被さってきた。

「もう少し、警戒しろ。俺は男だぞ」

「ど、どいてください!!」

「変なことはしない。だけど…」

「だけど?…ん」

キスが降ってきた。優しい触れるだけのキス。だけどわたしにとってはもうメンタルが擦りきれるぐらい恥ずかしい。振り払いたいけど綾斗さんの方が明らかに力が強いのでなすすべなし。されるがまま、唇を貪られた。

「……綾斗さん!」

「そう怒るな。赤面してる咲貴も可愛いぞ」

ただ、触れるだけのキスだったけどルージュを引いているので色が移ってしまっている。近くにあったティッシュを掴み、手渡す。

「早く拭いてください!」

「お前とのキスの証だからできれば断りたいな。おい、そんなに睨むな」

「バカなこと、言ってないで早く!」

シニカルに笑う唇からペールピンクの色が消えていく。