屋敷に帰ってきたら、男の子が走って近寄ってきた。

「ねえ、俺だけ挨拶無しってどういうこと?」

「?」

「子どもが大人の事情に口を挟むんじゃない」

「うるさいな。俺の母さんに話しかけて何が悪いんだよ」

「綾斗さんって子どもいたんですか?」

「何を言っている。こいつは柊一朗の子どもの琉依だ」

柊一朗さんってちょっと怖そうなあの人?言われてみれば似ている。

「ごめんね、無視したわけじゃないの。咲貴です。よろしく」

「もうしたからいい」

なんて生意気!…じゃなくて、ませているというか。ツンがたいぶ強い。

「琉依様!ここにいましたか。夕食の時間です」

「いらない。お腹空いてない」

「あっ琉依様!柊一朗様になんて言えば…」

「琉依のしつけは柊一朗の役目だ。それより、軽食を後で運んで来てくれ」

「かしこまりました」

綾斗さんに肩を抱かれながら、部屋に入る。

「今日は疲れただろ。ゆっくり、休め」

「はい…。綾斗さんは?」

「俺は慣れてるからこれぐらいなんともない」

すごいなぁ、あんなに大勢人がいたのに疲れないなんて。やっぱり、次期社長とも言われるとパーティーぐらいでは疲れないんだ。

「綾斗様。失礼します。軽食をお持ちしました」

「ご苦労だったな。もう下がっていいぞ」

「かしこまりました」