「あ、月城さん。こんにちは」

「こんにちは」

挨拶してきた人を見てビックリした。これまた、有名企業の代表取締役だったからだ。驚きの表情を必死に隠す。

「ところでこの綺麗な女性は?」

その人の目が少し好奇の色に染まる。綾斗さんが言ってたのはこういうことか。

「私の妻です」

挨拶しろというように引き寄せられる。

「咲貴です。よろしくお願いします」

「パーティーには初めて連れて来たので緊張しているんです」

「いいですねーこんな綺麗な女性を妻にできて。どこで知り合ったんですか?」

「行き着けのバーで飲んでたら、出会いまして。お互いに一目惚れしました」

馴れ初めが嘘で飾られてる!こういうのはもっとロマンチックなのが良かった。でももっともらしい理由じゃないと疑われるんだろう。

「一目惚れで結婚とはずいぶん、早いですね」

「それだけ、愛し合っているということです」

サラッとキザな台詞が飛び出た。愛し合っているという部分に過剰に反応してしまう。嘘だと分かっているのに。

「プロポーズにも苦労しました。咲貴は照れ屋なので」

「お熱いですな」

それから一言二言交わし、代表取締役は去って行った。