たぶん、彼女はこれで僕は去っていく、そう思ったのだろう。さっきのすごい運転の時とはまるで別人のように寂しそうな表情に戻っていた。
僕はあまりの事に言葉を発する事が出来なかった。呼吸を整える事がこんなに難しい事だとは思いもしなかった。
そんな僕に構わず彼女は言葉を続けた。
 「大河内さんの会社が今スポンサーになってくれているレース。実は私が走るんです。」
 その言葉を聞いて僕はますます返す言葉が見つからなかった。
 僕は自分での嫌になるくらい臆病だった。だから、正直言って彼女のその運転は怖かった。いや、怖いなんて表現では足りないくらいだった。僕の心は恐怖に支配されている感じさえしていた。
でも、僕の中にはその気持ちとは違うもう一つの大きな気持ちも存在していた。彼女を好きな気持ち。その二つの気持ちが僕の中でせめぎ合っていた。