天使の恋と涙

昼休みになった。
悪いけど何も喋る気になれない。

「…」

私が無言だからか、誰も何も喋らずただお弁当を食べていた。

すると。
「…ね。…あのさ、女子会、久しぶりにしない?」
唇を噛みしめ続ける私を見かねて友里乃が言った。

どうでもいいけど、2人は直子から今朝のことを聞いたのだろうか。

「…い、いいね。ね、リオ?」
みんなも賛同する。
…私のご機嫌を伺いながら。
「明日…早速どう?」

明日…

そのとき。
「熊田先輩!」
女の子に呼ばれた。
私たちは廊下側のドアの近くにいるからクラスの他の人は気づいていない。
直子たちに目配せをしてそっと抜け出し、人目につきにくいくぼみへ移動する。

「…どうしたの?」
「あの…これ、平野から…」
「ありがとう。」
「平野、どうしても抜け出せない用事が…あるらしくて。」
「…直接会いに来られないほどひどいの…」
「…ご存知なんですか?」
「え?」
「平野が毎日暴力振るわれてるの、ご存知なんですか?」
「…ま、まぁ。」
突然、ギッと私を睨む。
「半分はあなたのせいですよね?何で止めないんですか?あなたほどの権力があれば簡単に止められますよね?何でですか?何で…」
似てるなぁ。その強い目力。
「…きみ。平野くんが好きなの?」
…平野くんにそっくり。
「え…」
「2人、似合ってると思うよ。」
何言っているんだろ、私。
「私は…近くにいられればいい。」
独り言のように言う彼女。
「そ。」
「でも、苦しんでいるのを見るのは嫌です。」
「あなた、名前は?」
「…石井小春です。」
「小春ちゃんね。ありがと。」

…平野くんにふさわしいのは、小春ちゃんかもな。

なんて。
柄にもないことを思う。
受け取った紙を見てみると、平野くんの連絡先のようだった。


「どんな用だったの?」
「てか。他の人にバレたらあの子も、やばいよ。」
「…大丈夫だよ。何でもない。」
慌てて、受け取った紙をポケットにしまう。

わざわざ女の子に危険を冒させなきゃならないほど酷い状態なの?
もっとコハルちゃんを大切にした方が平野くんのためだと思うなぁ。

「…で。明日、どう?私たちはオッケーだけど。」

明日。平野くんとデートだけど…
会いたくない。
第一、無理でしょ。
あの身体だったら、休んでいた方がいい。
もしかしたら、あのメアドに連絡したらデートは無しって言われるかもしれないし。

「いいよ。いつものとこ予約しちゃっていい?今からだと、微妙かもだけど。」

本当に?
という自分の声を無視する。

私は、本当に彼のために休んで欲しいと思うのかな。

ドタキャンやすっぽかしなんて今までたくさんやってきたのに、
しかも今回はちゃんと理由があるはずなのに、
…心が痛む。