「熊田さん、帰られたよ。」
「っ!なんで!なんで帰しちゃうの。」

行かなきゃ。追いかけなきゃ。
まだ遠くへは行ってないはず。
…うっ。足が、動かない。

「お前の心配もしてた。」
「…っ」
「…彼女、お前の、死んだ母さんによく似てる。」
「え…?」
「それから、同じ病気でもある。」
「…!」
「でも、大丈夫さ。最新の設備が整った大学病院に通っておられるようだし。」

僕の死んだ母さんに似てる…

僕を産んで、
すぐに死んじゃった母さん。
顔も、何もかも、もう全く覚えていない。