一生分の愛を君へ

「それじゃないでしょ。ドリンクはこっちの瓶から空けて。」

高校を出てすぐ就職。
その職場も長く続かず
居酒屋のバイトを始めた。

優しく明るい人が多いその中でただ1人
妙に素っ気ない、背の高い男が岳(ガク)だ。

『初めてだからわからないんだけど。』

同い年ということは聞いていた。
私は157センチの平凡な身長で、でっかいそいつを睨むように見上げる。
負けず嫌いの私が、そんな偉そうな言い方で素直に
『はい』と言うわけがない。こいつはそんなことも知らないのだ。

岳は少しムッとしたように、手前の瓶をとり私の前に置いた。

「こっから使って?たいてい奥が新しいでしょ。」

そいつは180センチのでっかい背で平凡な私を見下ろした。
漫画やアニメだったら、火花が散っているところだ。
私だって考えたのだ。
新しい物からポンポン前に置いちゃうタイプの人が置いたか…
いや、奥に置くよなぁ…でも…と。

居酒屋で働くのは初めてだけど、こいつに教えられるのは嫌だと心から思う。

2人の奥で、製氷機が新しい氷を作り出しガタリと音をたてた。