一生分の愛を君へ

少しスピードは落ちるが
充分に気持ちよく風をきる。
一瞬、彼女の方を振り返ると
目を閉じて微笑み
風を感じていた。




あまりにきれいで
あまりに爽やかで

俺はまた
笑わずにはいられなかった。
緑の葉っぱがわさわさ歌う。俺もわははと笑いたい気分だ。
わはははは
彼女と同じ風を体一杯に感じながら
前へ上へ走る。

坂の角度が緩くなり

木々の隙間からキラキラと差し込む光が強くなる。
上りきった先の海に面した場所には

一面に
紫陽花が広がる。

プスンと音をたて
ベスパはおとなしくなった。

彼女はひょいっと地面に降り
無言のまま紫陽花に向かった。

「いいだろ?」

小さな体で光を全部受け取りながら

『綺麗…』
と笑う彼女。

お前の方が綺麗だよ。

っと
心の中で言った。

こっち見てよ。
とも言った。

心の中で。