一生分の愛を君へ

急いで外に出てエンジンをかける。ベスパはブルルルンっと音を出した。

梅雨の草花が濡れて光るのを見つめながら

カチッ

と音をたてヘルメットをかぶる。

ちょうど跨がったのと同時に
玄関から姉が足早に飛び出してきた。


『バカ想生!』

ごめんな姉ちゃん
俺は今、青春を謳歌し始めようとしているのだ。

「いってらっしゃーい」

あの子と一緒にいるとこに出くわさなくて本当に良かった。

姉を見送ったその勢いで
浜へ向かう。
まだいろよ…
いてくれ…!

と願いを込めて浜を見ると
俺が離れた時とほとんど同じ格好で彼女は海を見ていた。

用意したヘルメットをガードレールにカンカンッとぶつけ、振り向いたのを確認してから、彼女を呼んだ。
曇った空と海をバックにしても
走る姿は爽やかだ。

口許が緩むのを押さえながら、体の中が緊張でジンジンしているのを感じる。


彼女は階段をかけ上がり道路に上がると
急速に走るスピードを上げた。

「速…」
と思わず呟くほどに
足が速かった。