一生分の愛を君へ

靴を脱ぎ、座敷に上がると、靴は店員の手で木の下駄箱に入れられる。


『お飲み物お決まりですかぁ?』
と、紙とボールペンを見つめながら女性店員が聞いてきた。


熱燗、おちょこ二つで
と答えながら、私たちは彼女の細い指を見ていた。

『お待ちくださぁい』
と、彼女が立ち上がったあと真人に目をやると

真人はさっきまで伝票の上でさらさらと動いていた指のあった場所を見つめたまま喋り出す。

「友達の経営してるバーにさ、連れてきたいんだ。」
『…バーテンダーの友達がいんの?』

真人は視線をやっと私に戻す。
「うん。いとこのね、友達だけど。」

『ふーん。』

「行かない?」

『行く。』

そうか、と真人は笑い
暖かいおしぼりを顔にあてた。

「あったけぇ」

私も冷えた鼻におしぼりをあて、息を吸い込む。

フローラルの石鹸の優しい香りがした。