一生分の愛を君へ

ステージ上のスクリーンに
大好きなそのアーティストの名前が出ると、フェスに訪れたほとんどの人々がステージ前におしかけた。

ワァァァァア!!

という歓声とともに駆け出てきたのは私たちのヒーロー。
憧れ。

その瞬間、不意に岳と目が合った。

ドキッ


心臓が大きく鳴り、一曲目が始まるその時
岳が私の手を握り、跳び跳ねた。

「いやっほーーーー!」

岳の嬉しそうな声と共に、反対側の手が真人の手を握っているのが見えた。

ドキドキして損したかも。そんな気持ちを押し隠すために
『いやっほーーーー!とか昭和生まれ丸出しだから!』
とふざけて見せた。

「誇りもてよ昭和!」

そして一緒に跳び跳ねる。
いつまでもいつまでも続くような、そんな気がする時間だった。

岳の目にステージの光がキラキラ反射する。
あまりにきれいで、どうか岳から見る私の目も同じように輝いていますようにと
私は強く願った。


一通り盛り上がり、アンコール前のラスト一曲。

ユッタリと手を左右に振るラブソング始まった。
私の左手を握る岳の手が、少し強くなる。

思わず確認した岳の左手は
真人の手から離れていた。

握り返すことも離すこともできずに
ただただ空いた手を左右に大きく振り続けた。