一生分の愛を君へ

しばらく待つと、緑色のベスパに乗った想生が戻ってきた。

「こっちまで来て!」

黒いヘルメットを大きく振って私を呼ぶ。

「バイクの後ろ乗ったことある?すっげー気持ちいよ。」

鼻歌混じりに私にヘルメットをかぶせながら、想生は楽しそうに笑った。
少しだけ可愛く見えて、思わず私もにやつく。

バイクにまたがるとずしっとシートが沈み、甘いガソリンの匂いがした。


『何か、臭くない。甘い匂いがする。』


そういうのがあるんだと、想生はまた嬉しそうに説明した。
そんな説明を軽く聞き流しながら、想生の奥に広がる曇った紫の空を見つめる。

空は曇っていても壮大で
隣に広がる海は濁っていても寛大だった。


「いくよ?」


エンジンの音にはっとして、急いで返事をする。

パパパパパパ
と、音を鳴らしてバイクは走りだした。