一生分の愛を君へ

ぷいっと海に顔を向けると、想生はまたニヤリと笑った。

湿った海風が髪を揺らす。

なんて綺麗な顔をしているんだろう。この男は。

「失恋ではないな」

『ん?』

「一人で何してんの?」

『…ドライブ?』

「ドライブ?って…知らねぇよ。」


ふふっ
想生と私は目を合わせて笑った。

「車貸せよ。いいとこ連れてってあげる。」


海の音があまりに優しかったから。
風があまりに心地よかったから。

想生の何かが
岳に似ていたから。

私は簡単に車の鍵を差し出した。

「あっ!待った。」

『何?』

「車は置いてこう。バイク持ってくる。ここにいろよ。」

『うん。分かった。』

待ってろよ。と一言言って想生は走りだす。

バイクか。楽しみだな。
そんなことを考えながら見つめていると、想生がテンポよく振り返った。

「見知らぬ男に車預けんなよ。」

それだけ言ってまた駆け出す想生を見て
少しだけ泣いた。
理由はわからない。